避難所の現状

 避難所の現状は非常に厳しいです。特に都市部では避難所が足りない問題が深刻で、多くの人々が避難できない状況にあります。また、福祉避難所の不足も顕著です。さらに、新型コロナウイルスの影響で避難所の収容能力が一層低下しています。

都市部の避難所収容率

 都市部の避難所収容率は非常に低く、多くの避難所が満員となってしまいます。2019年に台風19号が襲来した際、東京と神奈川の沿岸地域では避難勧告が出されましたが、多くの避難所がいっぱいになってしまいました。調布市では体育館や校舎の廊下が避難者で溢れる事態が発生しました。

福祉避難所の不足

 福祉避難所の不足も大きな問題です。日本経済新聞の調査によると、全国で538万人分の福祉避難所が不足しており、市区町村の74%で福祉避難所が不足しています。福祉避難所が全くない自治体も全国に61か所あるとされています。また、福祉避難所は特に要支援者の受け入れが困難な状況です。

福祉避難所とは
災害時に高齢者や障害者など、避難生活において特別な配慮を必要とする人を対象に開設される避難所です。一般の避難所(小・中学校の体育館や公民館など)での生活が困難な人を対象に、バリアフリー化や多目的トイレなどの整備、相談員の配置など福祉的な配慮がなされています。

福祉避難所は、災害時にすぐに開設されるものではなく、甚大な被害が発生し、長期の避難生活が必要とされる場合に開設されます。災害発生時は、まずは近くの指定避難所に避難し、保健師などにより福祉避難所への移動が適当と判断された方が福祉避難所に移動します

新型コロナウイルスの影響

 新型コロナウイルスの感染拡大は避難所運営にさらなる困難をもたらしています。感染対策が必要となりスペース確保が必要になるため、避難所に収容できる人数が一層減少し、避難所が足りない問題がさらに深刻化しています。

避難所不足の原因

避難所施設の種類と現状

 避難所不足の原因の一つには、避難所施設の種類と現状が挙げられます。避難所には自治体が用意する一般避難所と福祉避難所がありますが、特に福祉避難所の不足が深刻です。全国で自力避難が困難な要支援者のための福祉避難所は25,597カ所ありますが、受け入れ可能人数は944,000人と限られています。日本経済新聞の調査によると、全国で538万人分の福祉避難所が不足しており、特に埼玉県三郷市など、福祉避難所がゼロの自治体も存在します。

人口密度と避難所のバランス

 人口密度と避難所のバランスが取れていないことも、避難所足りない状態を招いています。都市部では人口が集中しており、避難所のキャパシティが追いつかないことが多いです。

女性や災害弱者への対応不足

 避難所では女性や災害弱者への対応が不足していることも指摘されています。避難生活の中で、プライバシーの確保が難しく、女性が安心して過ごせる環境が整っていないことが多いです。

避難所不足の影響 

心のケアと孤独感

  避難所不足の影響は、避難者の心のケアにも及びます。過密な避難所ではプライバシーの確保が難しく、そういった環境下での生活がストレスとなり、精神的な負担が増します。福祉避難所が不足していることも影響し、特に災害弱者や要支援者が適切なサポートを受けられず、孤独感や不安感を強く感じることが報告されています。政府や自治体が心のケアに特化した対策を講じることが重要ですが、そのためのリソースも限られているため、多くの避難者が心の面でも困難を抱えています。

避難所の改善策

代替施設の利用

 避難所が足りない状況を改善するためには、代替施設の活用が不可欠です。都市部で避難所スペースの不足が深刻な問題となっている現在、学校の体育館や校舎の廊下だけでなく、空き家やホテル、さらには自治体の公共施設といった多様な建物を一時的な避難所として利用することが考えられます。このような代替施設の利用は、避難者の受け入れ能力を拡充し、居住空間の質を向上させる効果も期待できます。

避難所運営の見直し

 避難所の運営方法にも見直しが求められます。新型コロナウイルスの影響で避難所の人数制限が強化されましたが、これにより避難所が一層足りない状況が浮き彫りになりました。これを克服するためには、適切なソーシャルディスタンスを確保しつつ、効率的かつ実用的な運営を行う必要があります。感染症対策を徹底し、食料や物資の適正な管理、衛生環境の維持など、避難生活を支える基本的な仕組みを強化することが求められます。

地域住民の協力

 地域住民の協力も避難所不足を解決するためには欠かせません。地域コミュニティが避難所運営を支援することで、より迅速で柔軟な対応が可能になります。地域住民が自主的に物資の供給や情報の共有を行うことで、避難所の運営効率が大幅に向上します。また、地域の特性を生かして、避難計画を事前に策定し住民全体で共有することは、避難時の混乱を防ぐためにも非常に重要です。

政府や自治体の取り組み

 新型コロナウイルスの感染防止対策と避難所のスペース確保は重要な課題です。政府や自治体は、条例やガイドラインを迅速に改訂し、避難所の効率的な運営を支援するための資金やリソースを提供する必要があります。また、災害時には即座に対応できるよう、平時から避難所の整備状況を点検し、必要な改善を施すことが求められます。これにより、避難所が足りないという状況を改善し、住民が安心して避難できる環境を整えることができるでしょう。