1. 災害発生直後のデマの種類

根拠のない予言や再来の予兆

 災害が発生すると、特に根拠のない予言や再来の予兆が急速に広がります。「再び大きな地震が来る」といった予言や、「これは人工地震だ」といった主張がSNS上に多く見受けられます。能登半島地震でも、同様のデマが広がり不安を煽りました。これらの予言や予兆は科学的な根拠がなく、信じる価値がありません。

過去の『誤った被害情報』『デマ』

 平成5年に発生した釧路沖地震では、大規模な被害とともに、多くのデマが広がりました。当時はインターネットが普及していなかったため、主に口伝えや電話を通じてデマが広がりました。「釧路市全域が沈没する」といった根拠のない噂や、「次の地震はさらに大きなものが来る」といった予言めいた話が多くの人々を不安にさせました。

 熊本地震では「動物園のライオンが逃げた」というデマが広がりました。さらには、「熊本城が崩壊した」といった誇張された被害情報や、架空の救助要請がSNS上で広まり、救助隊の出動を混乱させる事態も発生しました。大きな混乱を引き起こしました。

 能登半島地震でX(旧Twitter)に「親友が家のドアが壊れて外に出られません」という偽情報が投稿され拡散されました。投稿には外れたドアノブを持つ画像が添付されていましたが、これは別のアカウントが2019年に投稿したものでした。

偽の救助要請

 災害時には、虚偽の救助要請も深刻な問題となります。SNS上で「助けて」といった偽のメッセージが拡散され、実際の救助活動を妨害するケースが多々あります。能登半島地震でも、いくつかの虚偽救助要請が確認されました。

2. 災害デマの拡散メカニズム

人間の心理とデマ拡散

  災害時には人間の心理がデマの拡散を助長することがあります。災害直後には多くの人が不安やパニックに陥りやすく、「嘘のような話」でもつい信じてしまう傾向があります。特に緊急時には、真偽を確かめる余裕がなく、善意から情報を共有してしまうこともあります。このため災害嘘のような話が広がりやすいのです。

SNSとデマの連鎖

  SNSは情報が瞬時に拡散されるため、災害時におけるデマもあっという間に広がります。たとえば、能登半島地震の際に「外国系の窃盗団が集結している」という偽情報がSNSを通じて広まりました。これは人々の不安を煽り、さらに多くの人が情報を信じて拡散するという連鎖を引き起こしました。SNS上での拡散は一見すると信頼性があるように見えますが、実際には誤情報も混ざっているため注意が必要です。

4. デマに惑わされないための対策

情報源の確認の重要性

 災害時におけるデマの拡散を避けるためには、情報源の確認が最も重要です。情報の信憑性を確かめるために、まずは発信元を確認することが欠かせません。総務省は、情報の信憑性を確認するために他の情報との比較や発信元の確認、作成日の確認、一次情報の確認を推奨しています。

公式発表と信頼できる報道機関の情報利用

 災害時には、公式発表や信頼できる報道機関からの情報を優先して利用することが重要です。信頼できる情報源としては、政府機関や警察、総務省などがあります。石川県警も能登半島地震の際には、偽情報を迅速に誤情報と認定する対応を行っており、このような公式のアナウンスメントを利用することで、デマの拡散を防ぐことができるのです。

冷静な情報判断と一呼吸おいて確認

 災害時には焦りや不安からデマに惑わされやすくなるものです。しかし、そのような感情はデマ拡散を助長してしまいます。すぐには信じず、一呼吸おいて冷静に情報を確認することが重要です。感情に流されず、疑わしい情報には慎重に対応することが、デマに対する最善の防衛策となります。

災害時には、家族や友人とも情報の受け取り方や発信について話し合い、正確な情報を共有することが大切です。

5. デマの法律的側面

デマを流すことの法的リスク

 災害嘘のような話を意図的に広めることには重大な法的リスクがあります。デマを流すことで、他人に損害を与える可能性があり、その行為が法に触れることは少なくありません。たとえば、虚偽の情報が広まり、それによって被害者が誤った行動を取ることがあると、被害者のみならず救助活動全体にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。このため、デマの発信には法的な責任が問われることがあります

偽計業務妨害罪

 デマを流す行為の一例として「偽計業務妨害罪」があります。これは、虚偽の情報を流布することで人や組織の業務を妨害することに関連する犯罪です。たとえば、地震の直後に偽の救助要請や虚偽の被害情報を伝えることで、実際の救助活動に支障をきたすことがあります。このような行為は刑法において厳しく罰せられます。熊本地震や能登半島地震においても、虚偽の情報が広まり救助活動が混乱した例があります。したがって、デマを流すことは単なる道徳的な問題にとどまらず、実際に法的な罰則を受ける可能性が高いという点を強く認識する必要があります。

逮捕事例
1月の能登半島地震で、交流サイト(SNS)を使ってうその救助要請をしたとして、石川県警は24日、偽計業務妨害の疑いで埼玉県八潮市大瀬の会社員、XX XX容疑者(25)を逮捕した。投稿された情報を基に警察官が現場に向かったが、被害は確認できなかった。「震災に便乗して自分の投稿に注目してほしかった」と容疑を認めている

6. まとめ

正確な情報の重要性

  災害が発生すると、様々な情報が飛び交います。嘘のような話や根拠のないデマも含まれており、それが誤った行動を引き起こすことがあります。デマは被災地の混乱を深め、救助活動を妨げる結果となります。したがって、正確な情報を得るためには、公式な情報源や信頼できる報道機関の発表を確認することが不可欠です。情報を鵜呑みにせず、一呼吸おいて冷静に判断することが求められます。

社会的責任と個人の注意

  デマの拡散を防ぐためには、社会全体の協力が必要です。災害時には不安や善意から、無意識に誤情報を拡散してしまうことがあります。しかし、無責任な情報共有は状況を悪化させるだけでなく、法的リスクを伴うこともあります。個人としては、正確な情報を意識的に選択し、デマに対して警戒心を持つことが重要です。総務省はインターネット上での情報の真偽を確認するための方法を提案しており、これを参考にすることが推奨されます。

総務省 情報流通行政局 情報流通振興課 情報活用支援室より

社会全体で情報リテラシーを高め、皆が正確な情報を発信し受け取ることで、災害時の混乱を最小限に抑えることができるのです。